東京で富士山に登る四つの方法
最も古いもの、最も高いもの、年に二日だけ開くもの、三日だけ開くもの — 登れる条件がそれぞれ違う。
江戸時代に富士信仰が広まったが、実際に登れる人は多くなかった。時間も金もかかり、後期まで女性は登れなかった。そこで町なかに富士山を築いた。富士塚である。ここに登れば本物の富士山に登ったのと同じご利益があるとされた。
東京にはこうした富士塚が60か所以上残る。そのうち実際に登れる場所はずっと少なく、登れる条件もそれぞれ違う。この記事はその条件を整理したものだ。
最も古いもの — 千駄ヶ谷
寛政元年(1789)築造。東京都指定有形民俗文化財。いつでも登れる。
都内に現存する富士塚のうち最も古い。1923年の関東大震災後に修復されたが、旧態をよくとどめている点が指定の理由だ。円墳形に土を盛り、富士山の溶岩は頂上付近にのみ配置されている。
ここでしか分からないこと
- 神社の案内では登拝はいつでも可能。ただし祭典・清掃・剪定・5月の薪能の際は閉鎖する
- 夜間は照明がない。日中に来るよう神社側が明記している
- 登頂した人向けの御朱印が別にある(500円)。社務所受付は9時〜17時
- 高さは資料によって6mと7mに分かれる
最も高いもの — 品川
高さ約15mで都内最大。明治2年(1869)築造、5年に再築。
高さ約15m、周囲約100m。北品川宿の講中三百余人が築いた。ただし今見えるのは原形ではない。第一京浜国道が通り、東側が削られている。
ここでしか分からないこと
- 神社自体が高台にある。富士塚の入口は正面石段の左手に別にある
- 途中から急勾配になり鎖が現れる。雨の翌日は滑る
- 一合目から九合目まで標石が立つ
- 毎年7月上旬に品川丸嘉講による山開きの神事がある
二日だけ開くもの — 十条
高さ約5.8m。6月30日・7月1日の大祭のときだけ登れる。
普段は塚そのものに登れない。富士山の山開きに合わせた大祭の二日だけ登拝が許される。北区の案内では例年9:00〜20:00、登拝は20時までだ。
ここでしか分からないこと
- 参拝に順序がある。線香を持って登り → 頂上の石祠前のコンクリート容器(焚上釜を模したもの)に投げ入れて焚き上げ → 石祠に礼拝する
- 23区の富士塚の山開きのなかで露店が多い部類に入る
- 都道拡張工事のため2023年に塚全体が奥へ移設された。古い写真と位置が違う
三日ほどしか開かないもの — 江古田
1839年築造。高さ約8mで都内最大級。国の重要有形民俗文化財。
東京の富士塚60か所あまりのうち、国の重要有形民俗文化財に指定されているのは五か所だけで、ここはその一つ。保存のため普段は近づけない。
ここでしか分からないこと
- 登拝できるのは正月三が日(1/1〜1/3)・7月1日(9:00〜15:00頃)・9月第2土日のみ
- 表面は富士山から運んだ本物の溶岩だ
- 西武池袋線江古田駅北口のすぐ前で、アクセスは最も簡単
まとめ — いつ行けるか
| 場所 | 高さ | 登れる日 |
|---|---|---|
| 千駄ヶ谷(渋谷区) | 約6〜7m | 常時(行事の際は閉鎖) |
| 品川(品川区) | 約15m | 常時 |
| 十条(北区) | 約5.8m | 6/30・7/1 |
| 江古田(練馬区) | 約8m | 1/1〜1/3・7/1・9月第2週末 |
つまり7月1日の一日だけは四か所すべてに登れる。富士山の山開きに合わせた日だからだ。その日は十条と江古田に人が集まるので、静かに見たいなら千駄ヶ谷と品川を別の日に回すほうがよい。
開放日と時間は年ごとに少し変わる。訪問前の確認をおすすめする。