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「東京三大煮込み」は誰が決めたのか
公的な認証でも組合の選定でもない。1990年に出た一冊の本から始まった言葉だ。
東京の酒場を調べていると「東京三大煮込み」という言葉に出会う。どこか公的な認証のように聞こえるが、そうではない。
太田和彦『居酒屋大全』(1990)が、北千住・大はし、森下・山利喜、月島・岸田屋の三軒を挙げたのが始まりだ。のちに立石・宇ち多゛と門前仲町・大坂屋を加えて五大煮込みと呼ぶようになった。つまり一人の書き手の選定が定着した言葉である。
五軒
| 店 | 町 | 区 |
|---|---|---|
| 大はし | 北千住 | 足立区 |
| 山利喜 | 森下 | 江東区 |
| 岸田屋 | 月島 | 中央区 |
| 宇ち多゛ | 立石 | 葛飾区 |
| 大坂屋 | 門前仲町 | 江東区 |
五軒のうち一軒だけが違う
大坂屋(門前仲町)
江東区
1924年に屋台で始まり、1947年に現在地で再開。五軒で唯一の串煮込み。
四軒は器に盛って出るが、大坂屋だけが煮込みを串に刺す。なんこつ・シロ・フワの三種が混ざって「一人前」単位で出てくる。部位を一つずつ選んで頼む店ではない。
大坂屋でだけ通用すること
- 座ると「煮込みは一人前でよろしいですか」と聞かれる。「はい」でいい
- 店内撮影禁止。三日月型のヒノキのカウンターも鍋も撮れない
- 締めは玉子入りスープ — 煮込みの煮汁に玉子を落としたもの
- 酒は梅割り。氷とチェイサーを頼める
営業情報が資料によって違う
大坂屋は16時開店だけが一致し、閉店は19時・20時・21時と資料が割れる。定休日も「日・月・祝」と「月・木・日・祝」の二通りが出回っている。古い情報がそのまま残っているためだ。材料がなくなれば閉める店なので、早い時間に行くことが唯一確実な方法である。
残りの四軒
大はし
足立区
1877年創業。煮込みは一人二皿まで。
山利喜 本館
江東区
宇ち多゛
葛飾区
メニューは「もつやき」の四文字だけ。部位と調理法を組み合わせて言う。
五軒に共通すること
- すべて大衆酒場だ。改まった服装で行く場所ではない
- おおむね現金。カードが使えない店が多い
- 回転が速い。二、三杯やって出るのが流れだ
- 岸田屋はこのサイトにまだ載せていない。確認が済んでいないためである
「三大」「五大」という言葉は、結局一人が好んだ店の一覧だ。それを知って行けば、一覧にない店に出会っても落胆しない。
営業時間と定休日は変わることがある。訪問前の確認をおすすめする。